定義:焙煎過程でコーヒー豆の温度が時間あたりにどれだけ上昇するかを示す指標。
概要:
温度上昇率(Rate of Rise, RoR)は、焙煎中の熱エネルギーの伝わり方を数値化する概念であり、単位は℃/分で表される。焙煎曲線の理解と設計において基礎となる要素であり、焙煎士はこれを手がかりに火力や排気を調整し、豆の発達をコントロールする。
語源・由来:
英語の “Rate of Rise” に由来し、「上昇する速度」を意味する。焙煎用語としては、温度曲線に対する微分値に相当し、ローストログを解析する中で定着した。RoRと温度推移グラフを併用することで、単なる到達温度以上に焙煎の質を把握できる。
歴史と背景:
1990年代以降、デジタル温度計やデータロガーの普及により、焙煎記録が可視化される中で注目された。特に2000年代のサードウェーブ以降、プロファイル管理の中心概念として広まり、RoRカーブの安定性が品質再現性の鍵とされるようになった。
特徴と風味:
RoRの推移は、豆内部の化学変化や風味形成に直結する。RoRが高すぎれば表面焼けや焦げにつながり、低すぎればフラットでぼやけた風味となる。理想的なカーブは、過度な上昇や停滞を避け、緩やかに下降していく形を描くとされる。
焙煎・抽出との関係:
焙煎では、RoRの制御がデベロップメントタイムや酸味・甘味・ボディのバランスを左右する。抽出においては、RoR管理の良し悪しが豆の溶解性やフレーバーの一貫性に影響するため、ハンドドリップやエスプレッソの結果にも直結する。
専門的評価:
SCAカッピング基準そのものにRoRの評価項目はないが、RoR制御が整った焙煎は「透明感」「一貫性」「クリーンカップ」といった高評価の条件を満たしやすい。国際競技会でも、RoRカーブを意識した焙煎戦略が報告されている。
関連語:
・焙煎曲線
・デベロップメントタイム
・熱伝達

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