【名詞】《焙煎度評価指標|色彩分析|コーヒー品質管理用語》
コーヒー豆の焙煎度(ローストレベル)を客観的かつ再現性のある数値で評価するための色度スケール。アメリカ・ネバダ州に拠点を置くAgtron社(Agtron Inc.)が開発した近赤外分光測定器「Agtron Spectrophotometer」または「M-Basic」シリーズにより、焙煎されたコーヒー豆の色を定量的に測定する。
■ 測定方法と原理
アグトロン値は、反射率の違いを利用して測定される色彩の数値化結果であり、通常0~100の範囲で表される。値が高いほど色が明るく、焙煎が浅いことを示す。逆に、値が低いほど色が暗く、深煎りであることを意味する。
本来は、国際照明委員会(CIE)のLab色空間に基づく「L値(明度)」に近似した値とされ、ヒトの視覚では感知しづらい微妙な焙煎差も可視化可能である。なお、Agtron値とL値の相関はあるものの、同一ではない。
■ 「豆値」と「粉値」
Agtron値には測定対象により二種が存在する:
- Whole Bean(豆値):焙煎豆の表面色を測定。視覚的印象に近く、店頭品質や表示基準に用いられる。
- Ground(粉値):挽いた粉の断面色を測定。焙煎の芯までの影響を把握できるため、抽出時の味わいに直結する情報とされる。
例:同一豆でも「Whole Bean 65 / Ground 55」といった表記がされる。
■ SCA基準と活用
スペシャルティコーヒー業界では、SCA(スペシャルティコーヒー協会)やCQI(コーヒー品質協会)などの機関により、標準的な焙煎度の範囲がAgtron値で規定されている。
- 【SCA推奨範囲】Ground Agtron 55〜70
→ 焙煎コンペティションやカッピングの基準に利用される。
また、ロースターにとっては再現性のある焙煎プロファイル管理、品質ブレの検出、輸出入検品における共通言語としても不可欠である。
■ 数値例とローストレベル目安(Ground基準):
| 焙煎度分類 | Agtron値目安 | 焙煎特徴 |
|---|---|---|
| ライトロースト | 80〜100 | 淡い色、酸味が強調、豆の個性が顕著 |
| ミディアムロースト | 60〜79 | バランスの取れた香味、甘みと酸の調和 |
| ダークロースト | 30〜59 | コクや苦味が支配的、チョコやカラメル香 |
| フレンチ〜イタリアンロースト | 0〜29 | 炭化寸前、極深煎り、エスプレッソ向け |
■ 注意点
- Agtron値は器材・照度・測定条件により誤差が生じるため、標準化された測定手法(SCAA規定など)に準拠する必要がある。
- 色の一貫性=味の一貫性とは限らず、補助指標としての活用が望ましい。
【関連語】焙煎プロファイル/L値(明度)/SCAA基準/カッピング/再現性

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