L値(エルち|L*値/Lightness)

【名詞】《色彩評価指標|CIE Lab色空間|焙煎度分析用語》

コーヒー豆の焙煎度や焙煎均一性を数値化する際に用いられる「明度(Lightness)」を示す指標値。国際照明委員会(CIE)が定める**CIE L*a*b*表色系(Lab色空間)**における明度成分であり、色を三次元で定量的に表す手法の一部として、食品・化粧品・塗装分野など幅広く利用されている。

■ 数値の意味

L値は**「0(完全な黒)」〜「100(完全な白)」の範囲**で表され、数値が高いほど明るく(浅煎り)、低いほど暗い(深煎り)ことを示す。
コーヒー豆の場合、焙煎が進むにつれて表面色が暗くなり、L値は徐々に低下する。

■ コーヒー業界におけるL値の活用

利用目的内容
焙煎度の定量評価豆や粉のL値を測定し、Agtron値の補助・代替指標として使用される。
焙煎均一性の確認豆の部位ごとにL値を測ることで「焼きムラ(焼き斑)」や芯残りを数値で検出できる。
品質管理と再現性向上同一プロファイルでの焙煎再現やロースター間の品質比較の基準となる。

特に近年のスペシャルティコーヒー領域では、Agtron値に加えてL値を測定するロースターが増加しており、色彩分光計や光学式L値測定器(例:ColorReader、Spectro 1)などが用いられる。

■ Agtron値との違いと補完関係

指標特徴
Agtron値コーヒー焙煎専用機器によるスケール、業界標準
L値汎用的な色彩尺度、細かい階調変化の検出に優れる

Agtron値は焙煎度区分の業界標準であるが、より精密な色解析やデジタル管理にはL値が有効とされる。実際の現場では、両者を併用し、数値の相関性を確認しながら焙煎プロファイルの整合性を高める方法が一般的。

■ 数値例(参考値・Groundベース):

焙煎度分類L値の目安特徴
浅煎り(ライト)60〜70明るく酸が際立ち、豆の個性が強い
中煎り50〜59甘みと酸のバランスが良好
深煎り30〜49香ばしさと苦味が支配的
極深煎り〜29焦げ茶~黒に近い、エスプレッソ用

※機器や測定条件によりばらつきがあるため、測定条件の統一が必須である。

■ 測定方法の留意点

  • 測定器ごとのキャリブレーション(白黒基準)を行うこと。
  • 挽きたての粉を均一に皿状に盛るなど、光の反射と吸収を一定に保つ工夫が求められる。
  • 粉・豆のどちらで測定するかにより値が異なるため、用途に応じて使い分けが必要。

【関連語】Agtron値/CIE Lab色空間/焙煎度/分光色差計/品質再現性
【類語】明度/光学反射率/色彩管理値

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