香気成分(こうきせいぶん)

【名詞】《アロマ成分|揮発化合物|香味科学》

コーヒーの香りを構成する微量の揮発性有機化合物の総称。
焙煎・抽出時に発生し、コーヒーの官能評価において「フレグランス(粉の香り)」「アロマ(液体の香り)」「アフターアロマ(余韻)」として認識される。
香気成分は、コーヒーの風味特性・品質・品種・精製・焙煎度を評価する上で不可欠な科学的指標であり、コーヒーの「記憶に残る香り」の本質を担う要素とされる。


■ 概要

  • コーヒーには800種類以上の香気成分が含まれているとされ、これはワインに匹敵する多様性を持つ。
  • 各成分は非常に微量であるが、嗅覚が極めて敏感に反応するため、全体の香味印象を大きく左右する。
  • 香気成分は、生豆の品種・精製法・発酵・焙煎条件・抽出プロセスに応じて大きく変化する。

■ 香りの分類(SCAカッピング基準に基づく)

区分定義
フレグランス粉を挽いた直後の香りナッツ、チョコレート、穀物などのドライ系
アロマ湯を注いだ直後の立ち上がる香りフローラル、シトラス、スパイス、ハーブ
アフターアロマ飲み下した後に鼻に抜ける香り(レトロネーザル香)ベリー、キャラメル、ロースト香、バニラなど

■ 主要な香気成分群(化学分類別)

化学分類特徴的な香り代表例
ピラジン類ナッツ系、チョコレート、焙煎香2-メチルピラジン、2,3-ジメチルピラジンなど
フラン類甘香ばしい、カラメル系5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)など
アルデヒド類青臭さや果実感、グリーンノートヘキサナール、ノナナールなど
エステル類フルーティ、甘酸っぱい酢酸イソアミル、酢酸エチルなど
ケトン類フローラル、バター、スパイスダイアセチル、2-ヘプタノンなど
チオール類トロピカルフルーツ、柑橘、複雑な香り3-メルカプトヘキシルアセテート(グアバ香など)
フェノール類煙、木、スモーキー、薬品的グアイアコール、フェノール、クロロゲン酸の誘導体など

■ 発生メカニズムと影響要因

工程香気生成への関与
生豆の品種・精製酵素・微生物の働きにより前駆物質の生成が決定する。ナチュラル精製はフルーティ系が豊かになる。
焙煎メイラード反応、ストレッカー分解、キャラメル化反応などにより多数の香気分子が発生する。
抽出温度、粒度、水質により揮発性成分の抽出効率が変化。抽出オーバーで香りが劣化することもある。

■ 官能評価との関係

  • 香気成分はSCAカッピングシートの評価軸のうち、「アロマ」「フレーバー」「アフターテイスト」「バランス」に密接に関与。
  • Qグレーダーをはじめとする専門家は、香りから豆のポテンシャルや焙煎の適正、欠点の有無を判断する。
  • 香気の記憶(オルファクトリー・メモリー)は、ブランドイメージや産地アイデンティティの形成にもつながる。

【関連語】揮発性有機化合物(VOC)/SCAアロマホイール/フレグランス/カッピング/焙煎反応
【類語】アロマ成分/香り成分/風味化合物
【分類】香味科学/化学構造/品質評価


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