【名詞】《コーヒー文化史|消費者運動|品質革新》
コーヒーを単なる嗜好品・日常消費物ではなく、“農作物としての個性”や“作り手の背景”までを含めて尊重・追求するムーブメント(潮流)。
アメリカ西海岸を起点に2000年代以降世界に広がった概念であり、「生産地・品種・精製・焙煎・抽出のすべてを透明かつ高品質に扱うことを是とする思想的アプローチ」を指す。
直訳で「第3の波」。これはコーヒー文化の歴史を**3段階の潮流=ウェーブ(wave)**として整理したうちの「第三波」に相当する。
■ コーヒー文化の三つの波(ウェーブ)
| 時代・潮流名 | 内容 |
|---|---|
| ファーストウェーブ(1st Wave) | 19〜20世紀。インスタントコーヒーや缶コーヒーの普及。大量生産・低価格・利便性重視。家庭や職場向け。 |
| セカンドウェーブ(2nd Wave) | 1970〜1990年代。シアトル系チェーン(例:スターバックス)などが牽引。エスプレッソ文化とカフェの快適性を重視。 |
| サードウェーブ(3rd Wave) | 2000年代〜。豆の産地・品種・栽培者の明示、浅煎り、ハンドドリップなど“クラフト志向”の高まり。 |
■ サードウェーブの主な思想と特徴
| 観点 | 特徴・方針 |
|---|---|
| 生産地意識 | トレーサビリティの確保(例:農園名・標高・品種の表示)/生産者との直接取引(ダイレクトトレード)の推進 |
| 品質評価 | スペシャルティコーヒー基準の導入/SCA方式によるカッピングスコア重視 |
| 焙煎 | 浅煎り~中煎りを好む傾向/豆本来の酸味や風味の表現に注力 |
| 抽出 | ハンドドリップ・エアロプレス・サイフォンなど多様化/バリスタの技術が品質に直結 |
| 店舗デザイン | シンプルで機能的/オープンキッチン・焙煎機の可視化による透明性の演出 |
| 消費者教育 | コーヒーのテロワールや抽出の理論を共有し、育てる文化を重視 |
■ 代表的ロースター/カフェブランド(海外)
- Blue Bottle Coffee(米・オークランド)
- Stumptown Coffee Roasters(米・ポートランド)
- Intelligentsia Coffee(米・シカゴ)
- Toby’s Estate(豪・シドニー)→ 現:Sey Coffee(NY)
- これらはいずれも「品質と生産者への敬意を軸とした新時代のコーヒー」として、世界の都市部に影響を与えた。
■ 日本における展開
- 2010年代以降、「ブルーボトルコーヒー日本上陸(2015年)」をきっかけに大衆にも広がる
- 東京・京都・福岡・金沢など都市部を中心に、スペシャルティ専門のロースタリー/カフェが台頭
- 「浅煎り×シングルオリジン×ハンドドリップ」がサードウェーブ的スタイルの代名詞として定着
- 国内の焙煎技術や抽出技術は独自進化を遂げつつあり、第四の波(フォースウェーブ)への移行も論じられる
■ 意義と批判的視点
| 意義 | 批判・課題 |
|---|---|
| ・消費者が豆の背景や品質に関心を持つ契機となった | ・敷居の高さ/味の個性の強さが、万人受けしにくいこともある |
| ・農家の適正収入・環境保全に貢献(SDGs文脈とも親和性あり) | ・「ブランディング重視」や「過剰演出」が先行する“表層的サードウェーブ”への懸念 |
| ・焙煎や抽出技術の高度化、職人文化としての確立に貢献 | ・都市部偏重、地方への浸透には価格・文化的障壁がある |
【関連語】スペシャルティコーヒー/クラフトロースター/ハンドドリップ/トレーサビリティ/浅煎り
【類語】ニューウェーブ/オルタナティブコーヒー/クラフトコーヒー文化
【分類】コーヒー史/文化潮流/消費者運動/店舗経営


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