直火式(じかびしき)

【名詞】《焙煎機構分類|熱源伝導方式|伝統型ロースター》

焙煎機の構造分類の一つで、ドラム内に直接火が入り、コーヒー豆に
直に火力が伝わる仕組みを持つ焙煎方式。
ドラムに穴(パンチングホール)が開けられており、火の熱・煙・遠赤外線が直接ドラム内に入り込む構造となっている。
火力がダイレクトに届くことで、香ばしさや強い焙煎香(ロースト香)を伴う個性的な味作りが可能であり、古典的・職人的な焙煎機構として現在も多くのロースターに支持されている。


■ 基本構造と定義

項目内容
ドラム構造多くはパンチングドラム(小孔つきの鉄製円筒)
熱の伝わり方伝導熱(直火)+対流熱+少量の輻射熱によって豆に熱が入る
熱源ガスバーナーが主流(直火バーナーがドラム下部に配置)
代表機種富士珈機、フジローヤル、小型焙煎機の一部、プロバット旧型など

■ 味わいの傾向と特徴

特性内容
香り(アロマ)焙煎香・スモーキーさ・香ばしさが強く出やすい
コクボディがしっかりし、深煎りでの重厚感が出やすい
酸味中浅煎りでは酸が残るが、深煎りになると角が取れた柔らかい酸味
風味の個性焙煎士の操作によって個性的なカッププロファイルを作りやすい
抽出適性ペーパードリップやネルとの相性が良く、昔ながらの喫茶店スタイルに好適

■ 半熱風式・熱風式との比較

区分直火式半熱風式熱風式
熱源の伝達方式火が直接ドラムに入り、豆に直接熱が入る火はドラム外から間接的に入る完全に熱風で加熱される
味わい傾向香ばしくワイルド、焙煎香が強く出やすいバランス型で明るさと深みが両立可能クリーンで酸やフレーバーが明確
焙煎操作の自由度高い(反応が早く、職人技が活きる)中程度(調整しやすく安定性もある)高い(精密制御・再現性が高い)
再現性やや低い(操作に習熟が必要)安定性あり非常に高い(オートプロファイル対応)

■ メリットと注意点

メリット注意点・デメリット
・香ばしさや焙煎香を活かした個性ある味づくりが可能煙やチャフが豆に残りやすく、清掃や管理が重要
短時間焙煎が可能で反応が速い火力調整が難しく、焙煎ムラや焼き過ぎに注意が必要
・設備が比較的コンパクトで導入しやすいプロファイル再現性が低く、熟練を要する

■ 現代における再評価

  • スペシャルティ市場では再現性の高い熱風式が主流である一方、
    日本のクラシックな喫茶文化や職人ロースターの間では直火式が根強く支持されている。
  • 「火のニュアンス」「煙の香ばしさ」「喫茶らしさ」など、他の方式には出せない“味の余韻”を求める声が多い。

【関連語】焙煎方式/ドラムロースター/パンチングドラム/伝導熱/スモーキー/喫茶ロースト
【類語】直火ロースター/クラシック焙煎/昭和型焙煎機
【分類】焙煎機構/味設計/設備分類/職人技術

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