TDS(Total Dissolved Solids)

定義:TDSとは「Total Dissolved Solids(全溶解固形分)」の略で、コーヒー抽出液に含まれる可溶性成分の濃度を百分率で表す指標である。

概要:
TDSはコーヒー抽出液に含まれる全ての溶解固形分(糖類、酸、有機化合物、カフェイン、油分など)の総量を示す。濃度を示すため、通常は%単位で表記される。一般的なハンドドリップやフィルター抽出では1.2〜1.5%、エスプレッソでは8〜12%程度となる。コーヒーの味覚評価において、抽出収率と組み合わせて用いることで抽出の妥当性を判断できる。

語源・由来:
TDSは分析化学や水質管理分野で用いられる一般的な用語であり、「水に溶けている固形物の総量」を意味する。コーヒー業界では20世紀後半以降、科学的な品質管理の一環として導入された。特に、抽出収率(EY)との関係性を可視化するSCAの「抽出チャート」において中核的な役割を果たしている。

歴史と背景:
TDSをコーヒーに応用したのは、1960年代の米国のコーヒー研究所(Coffee Brewing Institute)による官能評価と科学的データの関連付けが始まりとされる。その後、ポータブル屈折計やデジタルTDSメーターの普及により、2000年代以降はバリスタやロースターにとって日常的に使える指標となった。今日では世界中の競技会や品質管理の現場で標準的に活用されている。

特徴と風味:
TDSが高ければ液体は濃厚で重厚感を持ち、低ければ軽やかで透明感が強い。例えば、エスプレッソは高TDSゆえにオイルやコロイドによる強いボディを感じさせる。一方、透過式のドリップは低TDSであり、クリーンで繊細な風味表現に適する。TDS自体は「味の質」を決めるものではないが、濃度を数値化することで抽出設計を精密に行える。

焙煎・抽出との関係:
TDSは粉量、粉砕度、抽出時間、水温、水流量といった変数によって大きく変動する。焙煎度との関係では、深煎りは可溶性物質が増えるため高TDS傾向、浅煎りは低TDS傾向を示す。バリスタはTDSと抽出収率を両立させることで、狙い通りの風味バランスを実現する。

専門的評価:
SCAはゴールデンレンジとして、抽出収率18〜22%、TDS 1.15〜1.35%(ドリップの場合)を推奨している。これは長年の官能評価データと統計解析に基づいており、国際競技会や研究においても基準として用いられる。エスプレッソに関しては高濃度(8〜12%)が一般的で、基準値は抽出スタイルごとに変動する。

TDSの求め方(式):
TDS(%)=(溶解固形分の質量 ÷ 抽出液の総質量)× 100

※実際の現場では、デジタル屈折計を用いて測定することが多く、光の屈折率からTDS値が算出される。

関連語:

  • 抽出収率(Extraction Yield, EY)
  • 屈折計(Refractometer)
  • SCA抽出チャート
  • 総溶解固形分

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