生豆(なままめ)

【名詞】《原材料|焙煎前段階|コーヒー生産プロセス》

コーヒーの焙煎前の状態にある未加工の豆。コーヒーチェリー(果実)から果肉やミューシレージ、パーチメント層を除去し、乾燥・選別された後の種子であり、いわゆる「焙煎前のコーヒー原料」のこと。
英語では Green Coffee Beans(グリーンコーヒー)と称される。淡い緑色〜灰緑色の外観と、生鮮食品に似た青臭い香りを持つのが特徴。


■ 定義と構造

  • 生豆とは、コーヒーの果実から種子を取り出し、乾燥・精選・脱殻された状態の“最終精選原料”である。
  • 厳密には「生豆」とは外皮(果皮・果肉)とパーチメント層(内果皮)を取り除き、シルバースキンを薄く残した種子のことを指す。
  • 精製処理の手法により、同じ品種でも味わいや香りが大きく異なる。

■ 精製処理(プロセス)

方法名概要特徴・風味傾向
ウォッシュド式(Washed)水と機械で果肉を除去。パーチメント状態で発酵後、乾燥。クリーン、明瞭な酸味、繊細なフレーバー
ナチュラル式(Natural)果肉をつけたまま天日乾燥し、その後脱殻。フルーティー、ワイルド、甘さが強い
ハニー式(Honey)果肉を部分的に残した状態で乾燥。パーチメントあり。バランス型、蜂蜜のような甘み

■ 品質に影響する要因

要因説明
品種(Variety)アラビカ種、ロブスタ種、ブルボン種、ゲイシャなど。遺伝的特性に由来する。
標高(Altitude)一般に高地(1,200m以上)で育つ豆ほど酸味が明瞭で複雑性がある。
土壌・気候(Terroir)雨量、気温、日照、土壌組成により、豆の風味や密度が変化。
精製方法(Process)上記参照。味わい・香り・クリーンカップに直結する要素。
乾燥と保管(Drying & Storage)天日乾燥か機械乾燥か、乾燥後の保管方法によってカビや欠点豆の発生が左右される。

■ 生豆の評価基準

生豆の品質は、以下のような基準で評価される。

  • 水分値(Moisture Content):11.0〜12.5%が理想。高すぎるとカビの原因、低すぎると風味劣化。
  • 密度(Density):高密度な豆は均一に焙煎されやすく、味の複雑性を持つ傾向。
  • 欠点豆の数(Defect Count):SCA基準でグレード分けされ、欠点の少ない豆ほど高品質。
  • スクリーンサイズ(Screen Size):豆の大きさ。焙煎プロファイルに影響を与える。
  • 香りと見た目:発酵臭、異臭、異物の混入、カビ臭などは減点対象。

■ 生豆の保存と流通

  • 生豆は低湿度・低温・遮光・通気性のある環境で保管することが推奨される(15〜20℃、RH<60%)
  • 通常は麻袋(ジュートバッグ)で保管されるが、高品質豆にはグレインプロ、バキュームパックなど気密包装が用いられる。
  • 生豆の鮮度保持期間は1年程度が目安(品種・加工によって異なる)。

■ 焙煎との関係

焙煎士は、生豆の含水率・密度・精製法・品種に応じて焙煎プロファイルを調整する必要がある。
焙煎の反応(メイラード反応、キャラメリゼ、デベロップメントタイムなど)は、生豆の物理化学的特性に強く依存する。


【関連語】グリーンコーヒー/ウォッシュド/ナチュラル/スクリーンサイズ/精製方法/密度/欠点豆
【類語】未焙煎豆/パーチメントコーヒー(半加工段階)/生コーヒー豆

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