パルプドナチュラル(ぱるぷどなちゅらる)

【名詞】《精製方法|セミドライ製法|ブラジル系プロセス》

コーヒーの精製方法の一種で、果肉を除去した後に粘液質(ミューシレージ)を残したまま乾燥させるセミドライ式プロセス。
主にブラジルやインド、一部の中米地域で採用される。果実の甘みをある程度保持しつつ、発酵臭や乾燥リスクを軽減する目的で発展した。
ブラジルではセミウォッシュド(semi-washed)やデスムカード(Desmucilado)とも呼ばれ、ナチュラルとウォッシュドの中間に位置する製法とされる。


■ 製法の手順

  1. 収穫されたチェリーを選別し、水槽などで浮力によって完熟豆を選別
  2. パルピングマシン(果肉除去機)で外皮と果肉を除去
  3. ミューシレージ(粘液質)を残したまま、洗浄せずに天日または機械乾燥
  4. 水分が約11〜12%になるまで乾燥後、脱殻(ハルリング)と選別処理へ

👉 ミューシレージを洗い流すウォッシュド精製とは異なり、糖分が豆にある程度移行するため、風味に大きな影響を及ぼす。


■ 風味の特徴

特性内容
甘味ナチュラルほど強くはないが、ウォッシュドよりも甘味が明瞭
酸味控えめで柔らかく、落ち着いたバランスの良い酸を持つことが多い
クリーンさウォッシュドほどクリアではないが、ナチュラルより発酵臭が少ない
コク・ボディ中程度〜やや重めのボディ感。まろやかな口当たりが特徴
その他ダークチョコ、キャラメル、赤系果実、ナッツ系のフレーバーが多く見られる

■ 他の精製法との比較

精製法水使用発酵処理乾燥形式味の傾向
ウォッシュド多いありパーチメントのまま乾燥明瞭な酸味、クリーン、軽やか
ナチュラルなしなし果実のまま乾燥果実味強く、重めのボディ、複雑な風味
パルプドナチュラル少量~なしなし粘液質付きで乾燥甘味と酸味のバランス、中庸なコク、滑らかさ

■ 地域と歴史的背景

  • ブラジルで1990年代に品質向上を目的として普及
     特に高地での乾燥が可能な地域(ミナスジェライス州など)で広まり、スペシャルティコーヒーの生産に適用される
  • インドや一部のグアテマラなどでも応用されるが、乾燥工程の管理技術が必要なため、限られた生産者に限定されることが多い

■ メリットと課題

項目内容
メリット・甘味とクリーンカップのバランスが良い
・工程が比較的短く、水資源の節約にもつながる
課題・乾燥中にカビや発酵のリスクがあり、天候と設備管理が品質に直結する
市場性・スペシャルティ市場では、ウォッシュドよりも個性が強く、ナチュラルより扱いやすいとして評価

【関連語】精製法/ミューシレージ/セミウォッシュド/ドライプロセス/ウェットプロセス/ブラジル式精製
【類語】セミウォッシュド/ハニープロセス(類似)
【分類】生豆処理/ポストハーベスト/風味設計

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