定義:収率とは、投入された原料や工程に対して得られる最終的な成果物の割合を示す指標であり、コーヒーでは焙煎や抽出の効率を定量化するために用いられる。
概要:
コーヒーにおける収率は、大きく「焙煎収率(Roast Yield)」と「抽出収率(Extraction Yield)」に分けられる。焙煎収率は生豆の重量に対する焙煎後の重量比を示し、一般に70〜85%程度となる。一方、抽出収率は粉に含まれる可溶性成分のうち、実際に液体として抽出された割合を表し、18〜22%が理想的とされる(SCA基準)。この指標は品質管理や再現性の確保に欠かせない。
語源・由来:
「収率」は化学や工学の分野で広く使われる概念で、英語では “Yield” と表現される。もともと「得られたもの」を意味する語から派生し、農業における作物の収量や製造業における完成品比率を示す言葉として定着した。コーヒーの分野では特に焙煎と抽出の工程効率を数値化する際に導入された。
歴史と背景:
収率の概念は工業的な品質管理手法が導入される20世紀中盤以降、コーヒー業界でも注目され始めた。特に1960年代以降、アメリカや北欧での研究によって抽出収率が官能評価と相関することが明らかになり、スペシャルティコーヒーの普及とともに国際的な基準が整備された。SCAの「コーヒー抽出チャート」も、この歴史的流れの中で確立された代表的ツールである。
特徴と風味:
焙煎収率は水分蒸発や揮発性成分の変化によって決定され、低い収率は深煎り傾向、高い収率は浅煎り傾向を示す。抽出収率は風味の明確さやバランスに直結し、18〜22%の範囲では酸味・甘味・苦味の調和が取れるとされる。過抽出では苦味や渋みが支配的になり、逆に低収率では酸味や未抽出感が目立つ。
焙煎・抽出との関係:
焙煎収率はローストプロファイルの管理指標として利用され、焙煎度を定量的に示す重要なデータとなる。また抽出収率は、挽き目、抽出時間、水温、水質といった変数と密接に関わり、バリスタがレシピを最適化する際の中心的指標である。両者は品質の安定化や再現性確保において不可欠である。
専門的評価:
SCA(スペシャルティコーヒー協会)では抽出収率18〜22%、総溶解固形分(TDS)1.15〜1.35%を「ゴールデンレンジ」と定義している。焙煎収率については公式基準は存在しないが、多くの焙煎士が70〜75%を目安に管理している。収率はカッピング評価や研究論文でも頻繁に参照され、プロフェッショナル間で共通の技術言語として機能している。
収率の求め方(式):
- 焙煎収率(Roast Yield)
焙煎収率(%)=(焙煎後の豆重量 ÷ 生豆重量)× 100 - 抽出収率(Extraction Yield, EY)
抽出収率(%)=(抽出液重量 × TDS) ÷ 粉重量 × 100
※TDSは抽出液中の総溶解固形分(%)を指す。
関連語:
- 抽出率
- 焙煎歩留まり
- TDS(Total Dissolved Solids)
- SCA抽出チャート


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